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ナイン・インチ・ネイルズの『ザ・フラジャイル』を別格に位置づけておいて、本作を個人的な99年度ベスト・アルバムとしたい───それくらい入れ込んでしまったアルバムだ。 ケンタッキー州ルイズヴィル出身のデイズ・オブ・ザ・ニューは、REMのプロデ ューサーとして名高いスコット・リットに見出され、97年にスコットのレーベル=ア ウトポストからデビューしている。4人組だったが、事実上は全楽曲の作詞作曲を手がけるトラヴィス・ミークスのワンマン・バンドで、そのトラヴィスはファーストのリリース時点でまだ17歳の若さであった。平均年齢18歳の連中が出しているとは到底 信じられない、徹底して重く渋いサウンドをバックに、暗黒の闇から響きわたるようなヴォーカルを聞かせるデビュー作は驚きと賞賛をもって迎えられ、最終的に全米だけで百万枚を突破するセールスを記録している。 この作品は、それに続く2枚目のアルバムとなるわけだが、なんと結果的にトラヴィス以外のメンバーは全員脱退(※ドラマーのマットだけがレコーディングには参加 している)。前作をプロデュースしていたスコットもミキシングに協力するだけの立場へと押しやられ、自らプロデューサーの座についたトラヴィスは、何もかも思うがままになる環境を手に入れ、その才能を一気に爆発させた。 本作においてトラヴィスは、ギターのみならず、ベースとドラムも演奏し、そのうえで総勢10人のミュージシャン達に加え、オーケストラ・セクションとコーラス隊ま でをも完全にコントロールして、デビュー作で提示した世界をさらに拡大し深化させた驚異的なアルバムを完成させてしまった。前作に対してなされた「若いくせに年寄りくさいパール・ジャム・フォロワー」といったような表面的な形容は、本作を前に 消滅するほかない。アーシーなアメリカン・ロックが基本になってはいるが、随所で 聴かれるデジタル機材を駆使したサウンド処理も含め、凝りに凝ったアレンジは、通 常のハード・ロックとは明らかに位相を異にするものだ。ここには、ニック・ケイヴ に通じるような種類の情念が渦巻いているのを感じる。そして、息の詰まるような迫 力に全編が覆われていながら、途中でツラくなることなく最後まで一気に聴き通すこ とができるのは、何よりダイナミズムにあふれたクオリティの高い楽曲の力によるものだろう。 今回のアルバムも、デビュー作同様セルフ・タイトル(もしくはタイトルなし)で 、やはり同じように枯れ木をモチーフにしたジャケット・デザインが施されているた め、へたをすると2枚のアルバムの区別がつかないような状態になっている。まるで 「今作こそが正真正銘のデビュー作だ」とでも言いたげなムードを感じるが、トラヴィスの真意がどこにあるのかはまだよくわからない。 この恐るべき才能を持った20歳の若者(しかも、ルックスも見目麗しい才色兼備! )が、いったい何を考え、どうしてこのような漆黒の情念で塗り固めた音楽を生み出 さなければならなかったのか、現時点では情報が少なすぎることもあって、詳細な解 析を試みることは難しい。今はただ、その途方もない音世界の前に呆然とするしかな いのだが、いずれ機会を得て、トラヴィス・ミークスの本質にもっともっと迫ってみ たいと思う。 1999年 鈴木喜之
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