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燃える。こういうのは、すごく燃える。“ピーターガン”と“ミッション・インポッシブル”を合体させたかのようなオープニング・テーマで気分を出し、すかさず2曲目の“グリーン・ライト”で、俺の快楽中枢を最も刺激する「サビでタンバリンが16」をガツンとカマされた瞬間には、のけぞっちまって頭が地面につくかと思ったほどだ。そして、その後も次々に流れ出す「これぞまさしくハードボイルド・ロック」の世界。ホーンやヴァイオリンの使い方といい、各鍵盤類による雰囲気の出し方といい、そのいずれもが絶妙にツボを突いてくる。中でも迫力と軽快さを併せ持ったベースは特筆もので、“ドロッピング・ライク・フライズ”のベースラインは、曲調が全く違うので気付きにくいが、ダイアナ・ロス&シュープリームスの名曲“恋はあせらず”と同じパターンなのだ。一歩まちがえれば、とんだ時代錯誤にもなりかねないムードとも言えるが、そこを見事に持ちこたえているのは、なにより楽曲のクオリティーの高さとヴォーカルの説得力のおかげだろう。サウンドのイメージとしては、ニック・ケイヴ経由でトム・ウェイツを連想させるようなようなところもある。 なかなかの伊達男で、ニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンでは、かのジョン・スペンサーと微妙なライバル関係にあったという中心人物のトッド・アシュリーは、以前はコップ・シュート・コップという、サンプラーやメタル・パーカッションを多用したジャンクな音楽を演奏するバンドをやっていたが、そのバンドはベース2本のギターレス編成で、トッドはヴォーカルおよび高い方のベースを担当していたから、彼のベースラインには、ここでの経験が活かされているのかもしれない。なお、コップ・シュート・コップとしてのラスト・アルバム『リリース』には、現在のファイアーウォーターでの音楽性が随所に表れており、トッドが新しい方向性をすでに模索しはじめていた事実を示しているが、ここでトッドと他のメンバーの音楽的方向性に決定的な差異が生じたことが、コップ・シュート・コップ解散の原因となったようだ。 「もっとメロディアスで、美しくて、同時にユーモアもあるような、様々な感情を持つ音楽を生み出したいと考え始めていた」というトッドは、ジーザズ・リザードのデュアン・エディソンやソウル・コフィングのイヴォール・ガベイらに声をかけ、まずはジェット・セットというインディー・レーベルから、96年にデビュー・アルバム『GET OFF THE CROSS... WE NEED THE WOOD FOR THE FIRE』を発表。その後、固定したメンバーでツアーに出たところ好反応を得、晴れて完成させたメジャー第一弾アルバムが本作というわけだ。前作ではユダヤ民族の伝統音楽の要素が導入されていたが、今回は、“エル・ポラッコ”におけるメキシコのマーチング・バンド、“アナザー・パーフェクト・カタストロフィー”での場末のストリップ小屋風雰囲気、“ノッケム・ダウン”のゴスペルなど、さらに多様な音楽要素を吸収し、バンドの世界観をいっそう明確に提示することに成功している。 ちなみに、ファイアーウォーターというバンド名の由来は、アルコール(酒)を意味するスラングだとのこと。 1998年5月 鈴木喜之
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