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それは何故でしょう?

Adrian:うん。キング・クリムゾンの運営方法はこうだ。24色入りのクレヨンがあったとする。そのうち5本を選んで「使って良し」とする。他の色のクレヨンは触ってはいけない。そんな風なんだ。クリムゾンの活動にはある特定のパラメータが存在する。「ブルーズっぽいものはやらない」というのは、その一つだったんだけど、この度その規制は解かれたってわけ。新しい扉が開け放たれたのさ。

なるほど。ところで、最新作には、“ワン・タイム”や“ハートビート”、“待ってください”のようなタイプの曲を入れるというアイディアはなかったのでしょうか?

Adrian:そう、バラード。確かにバラードが欠けてる。興味深いね。そういう曲が入ってないアルバムは初めてじゃないかな。今ロバートと取りかかってる新曲は、結構“待ってください”の路線の曲だよ。アルバムを作る時はいつもそうだけど、まず音楽があふれ出してきて、それを元に造形していく。形作っていくんだ。今回のアルバムの制作当時は、バラードらしいものが見あたらなかった。近いものはあったけどね。“コーダ:アイ・ハヴ・ア・ドリーム”のアコースティック・バージョンというのがあって、それがアルバム中のバラード曲になるはずだった。でも、最終的にボツになったんだ。

前回来日時に、あなたがコンベンションで披露した“ダイナソー”の弾き語りも良かったですが、今回のステージで弾き語り演奏している“スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー”も凄くよかったです。他に、アコースティック・ソロのスタイルでやれるなあ、と考えているクリムゾンの楽曲はありますか?

Adrian:アメリカでは僕のソロ・ライヴの時に“待ってください”を演奏してるよ。他に何があったっけな。特に“ダイナソー”や“スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー”をアコースティック演奏していて面白いと思うのは、ヘヴィなインストの下に埋もれている歌の部分が、本当はどんなものだったのかが、分かってもらえることだよね。“スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー”では、一人の人間がどう演奏していたかが聴けるから、びっくりすると思うよ。この曲の違った一面を発見すると思う。もっといろんな曲もやってみたいね。“ハートビート”辺りはいいかもしれない。

ところで、フリップ氏は「今回のツアーでは90年代以前の楽曲はやらない」と公言していたように記憶しているんですが――

Adrian:今は“レッド”を加えてるから、その計画は変更されたね。まあ、フリップ氏はいろんなことを仰るから(笑)。現時点では、新曲を中心にやって、過去のマテリアルも導入していく、という形を採用している。ヨーロッパ・ツアーでは古い曲はあまりやらなかった。それ以来、古い曲を4曲追加している。今の編成のバンドが成長していくに従って、レパートリーも増えていく、っていう感じだよ。ロバートとしては、今となっては古くさく聞こえてしまう最初期の曲は避けたいらしいんだ。僕自身も、あまり初期の曲を歌うのは違和感があるしね。当時は大好きだったけど、今の世界にフィットするかどうかというと疑問だからね。

確かに。でも、結局80年代クリムゾンの曲や“レッド”をリストに加えたのは、どういう理由からなのでしょう?

Adrian:“レッド”はクリムゾンの代表曲と言っていいと思う。ロバートの作曲スタイルをよく表している。この曲のスタイルが、“ヴルーム”、“ヴルーム・ヴルーム”、“太陽と戦慄・パート4”へと受け継がれていった。どれも、彼の典型的な作曲スタイルに基づいてるから、今やってる事ともうまく適合するんだ。

それでは、今回のツアーで“ヒーローズ”をカバーした理由は?

Adrian:“ヒーローズ”のオリジナル・バージョンではロバートがプレイしてるし、僕自身、ギター奏者兼ミュージック・ディレクターとしてデヴィッド・ボウイとツアーした事もある。「クリムゾン以外の曲で何かできないだろうか、ビートルズでも?」って話していた時、結局、僕とロバートの両方が関わったことのある“ヒーローズ”がいいんじゃない、ってことになって。とにかく他人の曲を一度ライヴでやってみたかったんだよ。

カバーは初めてじゃないですか?

Adrian:そう、いわゆるカバーソングは初めてなんだよね。いつかツアー中にデヴィッド・ボウイが飛び入りして歌ってくれないかなって期待してるんだけど(笑)。

自分が歌うのは、まだなんとなく落ち着かないとか?

Adrian:いやいや、歌うのは楽しいよ。どの曲も楽しんで歌ってる。特にあの曲はパワフルだし、エモーショナルだからね。ボウイの曲の中でも一番好きな曲の一つだよ。

あなたの歌う“ヒーローズ”も素晴らしかったですよ。

Adrian:あ、ありがとう!

さて、この春にアルバムのプロモーションで来日したフリップ氏にインタビューした時に「“プロザック・ブルース”の歌詞についてはエイドリアンに質問してくれ」と言われました。どんなエピソードが、この歌には秘められているのでしょうか?

Adrian:フフフ。歌詞を書く時はまず、音楽を聴いてるうちにメロディがどうあるべきかが分かってくる。そして、何度も繰り返し聴いてるうちに、それがどんな内容の歌なのかが分かってくるんだ。意味が通じるかな? つまり、それがエモーショナルな歌か、言葉遊びの歌か、ユーモラスな歌か、シリアスな歌かが、最終的に聞こえてくるんだよ。“プロザック・ブルーズ”の場合、内容的にユーモラスな側面があるべきだって強く感じてね。ブルーズに不条理なアレンジを施した曲だから、歌詞も不条理なブルーズにすることにした。少し壊れたものにね。主人公が頭を剃って死んじゃった、っていうオチになってるところがすごくナンセンスで気に入ってるんだ(笑)。

なんでも、あなた自身も髪をつるつるに剃り上げてしまったそうですが?

Adrian:そうそう、このアルバムのレコーディング中にね。歌詞にはもちろん、現実に起こったことが反映されることが多い。キング・クリムゾンの作詞家としては、自分一人の意見よりはバンド全体の表現であることを心がけてるけどね。でも“プロザック・ブルーズ”の場合には、アルバム制作時に僕が頭をつるつるにしたらあまりにもウケたんで、それを歌詞に入れたら面白いと思ったんだ(笑)。

では頭を剃ったのは歌ができる前なのですね。

Adrian:うん。歌の方が後だよ。

わかりました。では、このへんで、あなた自身のソロ活動についても聴かせてください。クリムゾンとしての活動が一段落した後に、何か計画はありますか?

Adrian:作ってる途中のソロ・アルバムもあるし、僕が80年代にやっていたザ・ベアーズというバンドのアルバム用の曲も12曲完成してる。他にも、『DUST』というレアトラック集を作ってる最中なんだ。今のところ90トラック集まってるよ。ボックスセットの形になるんだけど、あまりにも巨大なボックスになりそうだから、箱の底に車輪を付けなきゃならないかもしれない(笑)。とにかく、同時進行してることは一杯あるんだ。現時点ではキング・クリムゾンの活動に集中してるけどね。クリムゾンで忙しくて、次のソロ・アルバムが完成するまではしばらくかかりそうだけど、いつもいろいろやってるよ。

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