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さて、以前あなたたちはオルナタティヴ・テンタクルズというレーベルに所属していましたが、彼らとどんなふうにして縁ができたのか、レーベル・オーナーのジェロ・ビアフラとはどんな人か、そういった話を聞かせてください。

John:80年代初めから中頃にかけて、僕たちがまだビクトリアに住んでいた頃に話はさかのぼるんだけど……当時はギタリストもまだトムじゃなくて、活動エリアもビクトリアとバンクーバー近辺だけだった。でも、ライヴの数も増えて、もっと手を広げたいと思っている時期だったから、当然、レコードを出すことや、まともな流通に乗せたいっていう気持ちも強くなっていたんだ。まもなく、カナダ全土でライヴをやるようになって、まずは『Sex Mad』をカナダのインディペンデント・レーベルから出した。実は最初、僕たちとしてはオルナタティヴ・テンタクルズよりSSTの方がしっくりくるかなと思ってたんだよね。SSTの所属バンドはみんな好きだったし。もちろんデッド・ケネディーズも大好きだったし、オルタナティヴ・テンタクルズの作品も気に入ってはいたけどね。でも1985年に、当時のマネージャーが全米を回るツアーをブッキングしてくれて……まあ、実際には金曜と土曜なんてライヴをやった記憶さえまるでないような状態だったけど(笑)、とにかくそのツアーの時に、サンフランシスコのライヴで、モーダム(Mordam)・レコードと契約しているヴィクティムズ・ファミリーっていうバンドと競演したんだ。後にモーダムはオルナタティヴ・テンタクルズのディストリビューターになるんだけど、そのサンフランシスコでのライヴの時、ヴィクティムズ・ファミリーと仲良くなったんだ。素晴らしいバンドだったし、向こうもこっちを気に入ってくれてさ。その時オルナタティヴ・テンタクルズの女性マネージャーが、モーダムのマネージャーの大親友だった関係でショウに来ていて、「あなたたち、いいバンドね。次はどこでライヴ?」と声をかけてきたんだ。「ジェロ・ビアフラに、あなたたちのライヴを見てもらうよう口添えするわ」ってね。それから何日か経って、彼女は実際にビアフラを連れて僕たちのライヴを観に来て、そしたら彼も僕たちのことをすごく気に入ってくれた。それで、ツアーを終えた後、オルナタティヴ・テンタクルズと契約の話をしたんだ。『Sex Mad』はもう完成していて、カナダではリリース済みだって話すと、最初に話を持ってきたマネージャーが「じゃあもう話は決まりね、ぜひうちでやりましょう」って言ってくれて、ジェロも「よし、そうしよう。俺も気に入ったし」って。それから、『Sex Mad』『Small Parts(Isolated and Destroyed)』『Wrong』『0+2(=1)』『Why Do They Call Me Mr. Happy?』『The Worldhood of the World (as such)』『Live and Cuddly』『Dance of the Headless Bourgeoisie』『One』、それからジェロ・ビアフラ/ノーミーンズノーのコンピレーションと、作品をリリースしてきたわけだよ。他にもEPやシングルがもろもろあって、所属していた14年間で合計10枚のレコードを出したことになる。

レーベルとの関係性はどうでしたか?

John:とても良かったよ。ビジネスライクなものではなく、友情と尊敬の念で結ばれていたからね。最近サンフランシスコに行ったときも、ジェロに会ったし。たぶん10月には、また会うことになるよ。偶然なんだけど、ジェロと出会うきっかけになったヴィクティムズ・ファミリーが昔のアルバムを再発することになって、その記念に再結成してカリフォルニアで10月に僕たちとライヴをやることになったんだ。だからまた、昔馴染みと顔を合わせるわけ(笑)。

現在はロングという自らのレーベルを運営しつつ、北米ではアントアシッド・オーディオ、ヨーロッパではサザーン・レコードと提携しているようですね、このような形態に移行してみて、調子はどうでしょう?

John:こうなったのは、モーダム・レコードが、ヨーロッパでのリリースについて、僕たちの助けになるどころか、かえって障害になってしまっていたのが一因なんだ。それで、ヨーロッパのディストリビューターとの関係を見直そうと決めたんだよ。で、サザーンと組みたいと思ったんだけど、それを現実に移すには、モーダムとのつながりを一切断ち切らなくてはいけなかった。そうなると、残念ながらオルタナティヴ・テンタクルズとの関係も終わりにするしかなかったんだ。僕たちがモーダムと縁を切ることを、ジェロはどうしても納得してくれなくて(笑)。モーダムはそのあと破産して廃業してしまったから、あの時点での僕たちの決断に意味があったかは今になると疑わしいけれど、当時はディストリビューションを変える必要性を感じていたのは確かだね。ロング・レコードは、何て言うのかな? ブランドというか、名前だけのもので、レーベルとしての実体はないんだよ。他のアーティストの作品を売るつもりもなく、ノーミーンズノー専用のレーベルで、サザーンのカタログに載せてもらうために作ったブランドなんだ。ただ、サザーンはアメリカに販路がないから、最新作の『(All Roads Lead to) Ausfahrt』をリリースした時には北米でリリースしてくれるところを探す必要があった。それで、昔からの友達のグレッグ・ワークマンが今イピキャック(Ipecac)をやってることを思い出して。グレッグは僕たちがいた頃のオルタナティヴ・テンタクルズでゼネラル・マネージャーを務めていた人だったから、また一緒にやれないか連絡してみたんだよ。そのイピキャックの姉妹レーベルがアントアシッド・オーディオで、基本的にはスタッフも同じ人たちなんだ。それで、『Ausfahrt』とコンピレーションの『The People’s Choice』について、アメリカでは彼にお世話になることにしたんだよ。だから結局、ここでも長年つきあいのあるスタッフや友達と組んでいるってことだね。僕たちは今まで築いてきた人々との関係性を大事にしたいんだ。単なる仕事仲間というだけじゃなく、友達としてね。

ちなみに、メジャー・レーベルと契約しようと考えたことは一度もないんですか?

John:それはないな。

Tom:でも90年くらいには、アトランティック・レコードのA&Rから、手当たり次第に手紙が送られてきたよね。

John:ああ、アトランティックがマネージメントに探りを入れてきたのは確かだ。ワーナー・ブラザーズもね……ただ、もし本当に契約を結んでいたら一巻の終わりだったと思う。僕たちはメジャー・レーベル向きのバンドではないんだ。音楽産業に組み込まれていないし、マーケティング可能な消費財ではないんだよ。イメージ作りもしないし、CDなり、他の製品なりを売るために音楽をやっているわけではない。もちろん、Tシャツやレコードは売るけれど、それは活動を続けていくためにある程度はお金を稼がないといけないからだし。僕たちは何よりもまずミュージシャン、それもライヴ活動に軸足を置くミュージシャンで、そこが僕たちの強みなんだ。もしメジャーと契約して業界にどっぷり組み込まれてしまったら、その強みが生きてこないはずさ。だから、さっきも言ったような長年の友達と組む方がいいんだ。ドライなビジネス関係も別に悪ではないよ。ただ、そのビジネスがうまくいってるうちはの話だけど。雲行きが怪しくなったら、向こうは「じゃあまた」って、もっと儲かりそうな他のアーティストのとこに行ってしまう。僕たちの場合、ライヴを企画したり一緒に仕事をしたりする人は、何よりも僕たちのことが好きだからやってくれているんだし、今までうまくやってこれたのもそのおかげなんだよ。

Tom:それは本当に大きいね。

John:成功できた秘訣は、そこにあるんだ。

Tom:それに、今となっては僕たち3人の誰をとっても、レコードを売りまくるマシーンに徹するだけのスタミナはないよ。ものすごく大変なことだからね。朝6時に起きて写真撮影、その後はレコード店でインストア、それからラジオ局やテレビ局を回ってとか……そういうのは本当にしんどいと思う。特にポップ・ミュージシャンに対して、売れるとけなすようなことを言う人もいるけれど、僕から言わせれば、大多数の人が聴きたがるのはああいう音楽なんだ。ポップ・ミュージックが聴きたいっていう人が大勢いても、僕はぜんぜん気にならないな。実際にポップ・ミュージックを作っている側は、ものすごくハードな生活を強いられているわけで、いつも周りを大勢の人に囲まれながら、何も自由に決められない。そんな生活に僕が耐えられるわけないよ。

John:ある意味ファンタジーの世界だね。名声と大金を手にして、自分の人生をコントロールできなくなってしまう。何をすべきか、どこに行くべきか、すべて人の指図に従わなくてはいけない。ポップ・ミュージシャンやポップ・バンドがどこかで燃え尽きてしまうのは、それが理由だ。そんな生活、いつまでも続けられるわけがない。成功後に手にしたものが当然と思うようになれば、いけ好かない奴になるだろうし、ドラッグやアルコールに溺れることも多い。ストレスやプレッシャー、イケイケな生活に疲れ果ててしまうんだ。いつもイメージを気にしていなくてはいけないし、特にロックンローラーだと「パーティ大好き野郎」みたいなイメージをキープしなくては、なんて思いにとりつかれたりする。それはほんと、若い連中のやるべきことだよ。

Tom:誰だって50歳、60歳になるのに、若々しいイメージをいつまでも保とうとする。特に最近は、映画やYouTubeでバンドの若い頃の映像がいつでも手軽に見られるから、50歳になっても25歳の頃の自分と比較されてしまう。だから、若い頃の外見を何とかキープしようと必死になる人がすごく増えてるね。そう思わない?

John:そうだね。

Tom:ま、俺たちはそういうことはやってないけどな(笑)!

John:やったってうまくいかないし。

Tom:無理だよ。

John:ちなみに、今日のライヴの1曲目は新曲なんだけど、そのタイトルは“Old”(古い)っていうんだ(爆笑)。


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