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こちらも楽しみにしています。ところで、過去イーヴンスのライヴにレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが飛び入りしたという噂を聞きました。それはどのようにして実現したのでしょう?

Ian:アルバムに収録されてる“On The Face Of It”という曲に、ごく短いピアノのフレーズが入ってる。楽器ではアルバム中、唯一のオーバーダブなんだけどね。この曲をライヴで演奏する時は、その部分だけゲスト・ミュージシャンを呼んでちょこっと演奏してもらうということを、ずっと前からやってきてるんだ。

いつも違った人を呼んでるんですか?

Ian:うん。誰かに小さなカシオ・キーボードを持ってきてもらったこともあるし。で、フリーは以前からいい友人で、ここ数年でエイミーとも親しくなってね。次のライヴを見に来るって言うから「じゃ、トランペットを持って来なよ」って誘ったんだ。ただそれだけ。10秒とかそこらのパートだよ。ステージにパッと登場して、サッと去っていった。一緒にプレイした、っていうよりは、一瞬だけ飛び入り参加したって感じだね。

一緒にコラボレートしたとか、そういうんじゃないんですね。

Ian:そう。でもフリーは実は優れたトランペット奏者でもあるからね。ベーシストになる前はトランペッターだったんだ。本当にびっくりするような、美しいフレーズを吹いてくれたよ。

いろんな人の飛び入りは、よくあることなんですか?

Ian:最近はあまりなかった。誰かに声をかけておくのを忘れてしまったりしてね。今度またやろうかな。アイディア自体は大好きだよ。でも、毎日プレイしてるとなると、つい忘れてたりするし。突然呼び出してもみんな来れるわけじゃないし。最低1日前には調整しておかないとならないから。

ところで、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといえば、ジョン・フルシアンテがあなたと一緒に制作した『DC EP』という作品を去年リリースしましたよね。

Ian:僕はプロデュースを任されただけだけどね。

この作品を作った時のエピソードや、仕上がった作品そのものに対する感想、さらにジョン・フルシアンテというアーティストに対する評価などを聞かせてください。

Ian:ジョンは僕が知ってる中で最も偉大なギター・プレイヤーだよ。非常に優れたミュージシャンだし、チリ・ペッパーズで活動しながら、精力的にソロ作品をリリースしている多作なアーティストだよね。彼とも良い友人同士なんだけど、あのプロジェクトについては彼から説明を聞いて、「ワシントンにおいでよ、一緒にレコーディングしよう」と僕が誘ったんだ。僕が25年間ずっと使ってるインナー・イヤー・スタジオで、ジェリー(・ブッシャー)にドラムを叩いてもらって、僕がプロデュースするから、って。それを聞いたジョンが「いいね」って言って、そんな風にして出来たアルバムだよ。僕の家に彼が泊まって、一緒にレコードを作った。2〜3日しかかからなかったんだ。本当にいいアーティストだと思う。あの作品は僕も大好きだ。

チリ・ペッパーズのようなバンドは、フガジとは正反対のまさにメジャーな音楽産業のど真ん中にいる人達だと思います。誠実なミュージシャンであれば、どのような立場の人でも心通じあえることを、これらのコラボレーションは証明しているように思えるのですが、それでも彼らと触れ合う際に、価値観を共有できない部分を感じることはあったりますか?

Ian:ビジネスでつき合ってるわけじゃないし、価値観でつき合ってるわけでもないからなぁ。彼らのことは、普通の人間としてしか見てないから。チリ・ペッパーズのメンバーだからって特別視する必要はないと思うし。たとえ政治とかビジネスとかパンク・ロック的な面で考え方が同じでも、人間的に鼻持ちならないと感じてしまう奴だってたくさんいるしね。人としてどうかっていうことの方に興味があるんだ。ジョンとは契約を結んでるわけじゃないし、フリーの飛び入りに彼のマネージャーが関わってるなんてこともない。単純に、友達だから助け合うんだよ。音楽のためにね。彼らには彼らの事情に基づいた活動の仕方があるんだろうし、僕には僕の事情に基づいたやり方がある。お互いにお互いのやり方を批判する立場にはないんだ。君はバンドとかやってる?

いえ、残念ながら。

Ian:例えばサッカーでも何でもいいけど、何人かで集まらないとできないことってあるだろ? 僕らのやってることって、1人でやるより複数でやった方がいいクリエイティヴ・プロセスなんだ。僕が世に放ちたいのはそういう音楽だよ。チリ・ペッパーズの音楽が僕の音楽とは別のチャンネルから流れてくるものだということは理解してる。でも、根本的に音楽であることには変わりないんだ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズについて、これは言っておきたいな。確かに彼らのキャリアには、問題視されても仕方ないようなことが過去にあった。そして、ものすごくビッグな人気バンドだってことも分かってる。人気バンドゆえに巨額の金が動くもんだから、バンドの周辺には欲の張った怪しいビジネスマンが徘徊してる。でも、それは彼らにコントロールできることじゃないんだよね。僕は彼らのそういう面を全部理解してるつもりだよ。もう一つ指摘しておきたいのは、チリ・ペッパーズのライヴ・パフォーマーとしての凄さだね。彼らの演奏は、世間一般のバンドより頭ひとつ抜きん出てる。技術的にも、音楽性の深さでもね。ぜひ、彼らのライヴを観に行くことをお薦めするよ。別に世界一のバンドだとか言いたいわけじゃなくて、もし彼らのことを俗っぽい商業的なバンドだって思ってる人がいたなら、こう言いたい。僕は生まれてから今まで数え切れないほどたくさんバンドのライヴを観てきた。星の数ほどね。その僕が言うんだから間違いないよ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズが凄いっていうことはね。真剣に凄いよ。音楽のために生きてるような奴らだから。ジョン・フルシアンテは音楽のために生きてる。毎日、四六時中、音楽のことしか考えてない男なんだ。

わかりました。さて、『バーン・トゥ・シャイン』というDVD作品を非常に楽しんで拝見しました。2度とは存在しないシチュエーションでのライヴ、D.C.のアーティストが集まって演奏する、など興味深いコンセプトを持った作品ですが、あの作品の撮影に参加した時の話や、出来上がった作品を見た時の感想などを聞かせてください。

Ian:あれはブレンダンのプロジェクトで、彼が電話してきてイーヴンスでやってみる気はあるか?って訊いてきたんだ。彼の友人の家が取り壊される前に火をつけられるって話で。燃やされる家だからどんな使い方をしてもいい、って言われて、ブレンダンがそこでライヴを撮影しようと思い付いたんだ。その後、家が燃やされるシーンも撮っておいてね。撮影の日はものすごく寒い日で、たぶん気温が……華氏10度(摂氏マイナス12度)かなんかで。がらんどうの家にはもちろん暖房なんかなくて、だからみんな厚いコートを着込んでるんだ。(割り込みコールが入る)ごめん、ちょっと待っててくれる? −(間)− ラングフィッシュのエイサだったよ。

大丈夫ですか?

Ian:後でかけ直すから大丈夫。で、とにかく寒い中エイミーとロケ地に行って、他のバンドを4つほど観て……テッド・レオ、ボブ・モウルド……どれも面白かったよ。いい経験だった。正直言って、DVDの仕上がりには少し批判的な部分もあるんだけどね。何故かというと、みんな陰気な表情に撮れてるからさ。でも、実際には結構、喜びに溢れた、楽しい日だった印象があるんだよ。話をして、笑い合って過ごした1日だったんだ。でも、編集上の判断で笑みが見えるシーンは全てカットされた。カメラに向かってプレイすること自体、ぎこちなくなるものなんだよね。ひとつの部屋に、カメラと5〜6人いるだけの撮影なんだ。あれからブレンダンは、同じシリーズとしてシカゴ・ヴァージョンを撮ってて、そっちにはウィルコやシェラックなんかが参加してる。もうすぐリリースされると思うよ。2週間前にはポートランドで、スリーター・キニーとかとやってるはずだ。

そちらも楽しみにしてます。さて、前回インタビューさせていただいた時は、Q and not Uとブラック・アイズ、エル・グアポの新作が出るという話で盛り上がっていたのですが、たいへん残念なことにもはやいずれのバンドもなくなってしまいました。D.C.のアーティスト達は特定のプロジェクトに固執せずに自由なスタンスで表現活動に向かう傾向が強いような気がしてきたのですが、確かにエル・グアポはスーパーシステムになり、ファラケットが解散してもメディケイションズが生まれたわけで、次々に新たな創作の場が生まれていくのであればそれでいいのかもしれません。ただ、それでも外野から見ると「あんな良いバンドだったのにもったいない」と感じてしまいます。

Ian:バンドって人間関係だからさ。人間関係そのものなんだよ。特にここワシントンD.C.では、音楽で生計を立てるということが出来ない。音楽業界というものがない街だからね。N.Y.やL.A.ではバンド名が商標となって、メンバーチェンジしてもバンド名を残してるけど、この街で音楽をやるってことは、よっぽど音楽が好きだってことなんだよね。音楽をやるには、音楽仲間との合意に基づいて始めることになる。仲間との関係性は、他のどんな人間関係とも同じように、時とともに変わるものなんだ。だから、ある程度まで行ったら「そろそろ終わりかな」っていう合意に達して、関係を停止することになる。過去25年間、僕は多くのバンドの始まりと終わりを見てきたけど、一般に、早く思える解散よりも、遅すぎる解散の方が問題が多いんだよね。必ずではないけれど、ありがちなのは、ただバンド名を存続させるためだけにメンバーチェンジを繰り返して、必要以上に長く続いてしまうこと。それだと初期の作品をやる意味がなくなってしまったりする。いくつもの偉大なバンドが、そのオリジナルの形とは似ても似つかないものに変化しているにもかかわらず、同じ名前を使い続けてる。そうすると、そのバンドについて話す時、なんらかの条件付で話さねばならなくなってしまうんだよね。例えばバッド・ブレインズ。僕が初めて彼らを観たのは1979年だった。1980年までには、僕の中で歴代1位の、最も偉大なバンドになっていたよ。でも、彼らはいつまでも止めなかった。シンガーが変わっても、ドラマーが変わってもプレイし続けた。オリジナル・メンバーが戻ってきたりもしたけど、変におかしくなってしまって、ホモフォビックになったり、メジャー・レーベルとサインしたり……。だから、そういうバンドについて話をする時は、どの時代かはっきりさせなきゃならない。バンドが結成される時って、一種のエネルギーが生まれると思うんだ。そしてそのエネルギーが枯れた時、そのバンドは終わる。これが一番オーガニックで健康的な在り方だよ。もちろん僕だって、ブラック・アイズが終わったと聞いてすごく悲しかった。彼らのセカンド・アルバムは素晴らしかったし、ライヴも最高だったしね。でも、メンバーの1人が引っ越すことになって、そのメンバー抜きでは続けたくなかったからって解散したんだ。バンドがどうして変化するのか、何故そういう決断をするのかは、究極的には本人達にしか分からないけどね。ともかく、いろんなバンドが解散してしまうのが悲しい気持ちは分かるけど、Q and not Uやブラック・アイズだって、その元のバンドが解散しなければ存在してなかったんだから。

それはそうですね(笑)。

Ian:だから僕は、常に次に来るものに対して希望を持ち続けてるんだ。そこが一番面白いと思うからね。

そういえば不思議ですよね。例えばオリジナル・メンバーのギタリストが抜けて、代わりが入った場合より、解散した場合の方が惜しまれる、っていうのは。

Ian:それは、バンドよりもバンドの曲に執着してるからじゃないかな。それはそのバンドのエッセンス的な部分とはまた別の話だよ。そうなると、要するに、曲を再生するためだけにの存在になってしまう。人々が望む通りの商品を提供するだけのね。それじゃつまらないよ。

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