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さて、あなたは他のロック系ドラマーと違って、ふだんのリスニング生活では、ポーティスヘッドとかジェフ・バックリィとかトム・ウェイツ、アンジェロ・バダラメンティなどがお好きなそうですね。あなたの、作曲家としてのバックボーンはどういったところにあるのでしょう。

Jerome:そう、今挙げてくれたようなアーティストにすごく影響を受けてきたんだ。ジェフ・バックリィ、ポーティスヘッド……他にも色々な作曲家に影響を受けてるよ。ベートーベン、シュトラウス、ヴィヴァルディ、コープランド。みんな、非常に大きな存在だね。僕は彼らの作品の大ファンだけれども、音楽的な面よりは、自分の中の傷つきやすい場所、エモーショナルな部分を中心に曲を書いてるところに影響されたんだ。僕が音楽を通してやりたいのもそういうことだからね。まさに今回のアルバム『リマインダー』で試みてるのもそういうことだし。

また、多様な楽器の演奏やソングライティングだけでなく、いわゆるサウンド・プロダクションの部分も、あなた自身で手がけていますよね――ブレット・ピアスやキース・ヒルブラントの助力はありますが。レコーディングにおけるエンジニアリングやミキシングなどの技術に関しては、どのようにして習得してきたのですか?

Jerome:サウンドを練り上げていくという側面でのエンジニアリングについては、主にブレットの仕事だったんだ。彼とやりたかったのはそのためだったしね。スタジオワークに関して鋭い感覚を持ってる人だし、彼のセンスをすごく買ってる。ただし、そんなに技術面にばかり集中するだけじゃなくて、優れた音楽的なマインドを持ってる人でもあるんだ。だから、彼とこれだけ長い間仕事をできたのはラッキーだったと思ってるよ。今回のアルバムにおいて彼の存在は、技術面でも音楽面でもすごく大きい。ブレットは直観的なミュージシャンでもあるからね。キースの方は、同時期に他のプロジェクトで忙しかったりしたもんで、2曲ほどでミックスを手掛けてくれて、サウンドデザインを少しばかり加えてくれただけなんだ。ニューオーリンズのトレントのスタジオで、ドラムスのトラックダウンを行なった時に、そのセッションをまとめる手助けをしてくれたりもしたな。その辺はアラン・モウルダーとリオ・ヘレーラにも助けを借りることができた。ただ、みんなが家族と過ごす休暇で一斉にいなくなってしまったこともあって、その時は1人になった機会を有効に使おうと、スタジオで1人きりのままドラムスを録音したよ。

では、ペトラとターニャのヘイデン姉妹をはじめとするストリングス・セクションを起用することになった経緯は?

Jerome:アフガン・ウィッグス〜トワイライト・シンガーズのグレッグ・デュリから紹介してもらったんだ。トワイライト・シンガーズの『Blackberry Belle』というアルバムに参加してて、彼にとってペトラ・ヘイデンは最高のシンガーで、彼女の声とバイオリンがとにかく好きなんだって。それで僕も早速このチャンスを生かして、アルバムに参加してもらったというわけ。

わかりました。さて、アルバム・タイトルの『リマインダー』は、「あなた自身が繰り返し見る夢」「傷跡が思い出させる、つらい喪失の経験」というふたつのコンセプトを意味しているそうですね。あなたが実際に何度も見た夢の内容について、もう少し詳しく教えてもらえますか? そして現在あなたは、その夢が何を象徴し、そこから最終的に何を得たと考えていますか?

Jerome:アルバム・タイトルについて言うと、「繰り返し見る夢は僕に何かを気づかせようと(リマインドさせようと)しているに違いない」と思ったことがまずひとつ。そして、次に重要なのが『喪失感』だった。繰り返し見る夢の中には、免れることのできない死のイメージがあって……こんなこと言うと病的に思われるかも知れないけど、全体的に死の雰囲気に覆われている感じだったんだ。その夢から目が覚めるとえらく気が滅入って、立ち直るのに一週間ぐらいかかってたほどでね。喪失感に対処する方法は人それぞれだと思う。今作の場合は必ずしも近しい人を失ったことや誰かの死による喪失感だけじゃなくて、例えば四肢を失ったり、2度と戻らない何かを失った喪失感と、それをどう克服するかについて扱ってるんだ。例えば、無くした四肢のことを思うことは、ある瞬間に自分が何者であったか、そして現在の自分が何者であるかを思い出させたりする。みんなそれぞれ、自分なりの方法で立ち向かって、克服していかなきゃならないんだよね。このモチーフを使うことによって、様々なことを結びつけて語ることができるから、すごく面白いなと思って、それで、これを元にコンセプト・アルバムを作ることにしたんだ。

今でもその夢は見てしまうんですか?

Jerome:いや……ここ2〜3年は見てないかな。

このレコードを完成させたことが、夢を見なくなったことと関係あると思います?

Jerome:多分ね……。夢を見始めたのが1996年頃で、しばらくは自分でも同じ夢を繰り返し見てることに気づかなくて、1年以上経って初めて気づいたんだ。そのうち、同じ夢を見る度に内容が徐々に深くなっていって、2002〜03年頃に止まった。夢を書き留めたり、レコードを作ったりしたことが、夢を見なくなったことと関係してる可能性はあると思う。ある意味、自分で浄化できたような感じなんだ。レコードを作ってるうちに解消されていったのかも知れないし、そうじゃないかも知れないけど、本当のところは分からないね。芸術を通しての浄化が、カタルシス的な役割を担ったのかどうか……もしかしたらそうかもしれないけど、どうかな。もしそうだとしたら素晴らしいと思うし、リスナーにとってもカタルシス的な経験になりうるかもしれない。でも、確かめる術はないな。

アルバムのアートワークは、シンクに捨てられた一輪の枯れた花で、炎をあげているようにも見えます。この写真が象徴しているのはどういったことなのでしょう?

Jerome:このアートワークで僕が表現したかったことは色々ある。美と生命の象徴として、そして非常に有機的なものとして、バラの花を中心に据えたんだ。それから、古びて飾り気のない汚れたシンクが、僕が住んでる集合住宅の駐車場に捨てられていたのを見つけてね。僕としては、燃えている花を中心にしたコンセプトを考えてて、他には、水に関連するイメージがアルバム全体に一貫しているテーマだったんで――例えば、アルバム最後の方の“Tributary”という曲は、『生命はより大きな水域へと繋がる小さな水域である』ということをシンボライズしている。『大きな水域』は、より高等な意識のようなものとも言えるんだけどね。で、シンクというものは水で満たすことができて、栓を抜けばその水はどこかへ消えてしまう――誰にも分からない何処かかへとね。そういう存在の象徴なんだ。アートワークの写真はポラロイド・カメラで撮って、撮影には20〜30分ぐらいしかかかってない。たくさんある中で、この一枚の写真に、何故か何度も惹き付けられて、レコーディングしながらずっと気になってたんだ。いちばん象徴的な写真に思えたんだよね。だからそれをキープしたんだ。

では、自分で撮った写真なんですね。

Jerome:そう。僕が自分で撮ったポラロイド写真だよ。

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